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第31話 視線が合う夜

Author: marimo
last update Last Updated: 2026-01-19 20:09:35

 週末のNight Indigoは、いつもより少しだけ賑わっていた。

 それでも、騒がしさとは無縁の、落ち着いた空気は変わらない。

 真琴は、ドアを開けた瞬間に、深く息を吸った。

 ジャズの音、グラスの触れ合う音、微かなアルコールの香り。

 ここに来ると、自然と呼吸が整う。

 カウンターの端に、空席を見つける。

 バッグを膝に置き、腰を下ろした。

「“いつもの” ソルティドッグでよろしいですか?」

 榊レンの声に、真琴は小さく笑う。

「……覚えられてるの、ちょっと複雑です」

「悪い意味ではありませんよ」

 レンはそう言って、手際よくグラスを用意する。

 塩をまぶした縁に、淡い色の液体が注がれていく。

 真琴は、グラスが置かれるのを待ちながら、

 何気なく店内を見渡した。

 そのときだった。

 ――いた。

 カウンターの少し奥。

 壁側の席に、慎一が座っていた。

 前と同じ、控えめな色のシャツ。

 背筋を伸ばし、静かにグラスを傾けている。

(……やっぱり)

 驚きよりも、納得の方が先に来た。

 来るかもしれない、と思っていた。

 それだけだ。

 慎一は、まだこちらに気づいていない。

 
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